密命

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密命

玲氏は慶達をじっと見つめている。 郭李が一歩先へ出て皇后へ挨拶をする。 「はい。昇楼君殿から私宛に書簡をいただき依頼があるので孫国へ来てほしい  と連絡が合った次第です。」 「そうか、そちらが昇楼君が遣わした者たちか、、、  早速で悪いがそちらに伝えねばならないことがある、、、」 「伝えたい事ですか?そういえば、当人の昇楼君殿はおらぬのですか?」 玲氏は少し間を置き口を開く。 「昇楼君は、、2日前に死んだ。」 慶達はまさかの事実に驚く。 「亡くなられた、、、、」 「せっかく来てもらって悪いが死んだのだ。  おそらく刺客を遣わされてな」 「刺客?一体何が?」 玲氏が口を開こうとすると横にいた壁俊が代わりにしゃべりだした 「おそらく、息子の孫雄殿だ。」 「孫雄?」 「ああ、異母兄弟だがな。」 「、、、、、、」 玲氏はその場で黙っている。 「私がかわりに事を話そう。」 壁俊の話はこうだ。 孫家は正室の玲氏と王の子である2人の王子と1人の王女がいる。 しかし、孫雄は孫邦がかつて王になる前に愛し合っていた女性との子である。 7年前にその女性と孫雄は孫国の王となった孫邦に呼びこまれ国都で住むこと になった。 玲氏はその女性をやさしく受け入れ彼女を側室として迎え入れるように 孫邦へ進言した。 そして、はれて孫雄と母は孫国の側室として迎え入れられたのだが ある日事件が起きる。 孫国へ他国の刺客が入り込み玲氏を襲ったのだ。 その場にいた、孫邦と孫雄親子。 孫雄は家来を使い戦うも刺客が殺されてしまい誅地に陥ってしまう。 そんななか、孫雄の母が盾となり孫雄・孫邦・玲氏を逃がそうとする。 玲氏は力ずくで助けに行こうとするも孫雄の母の命がけの行為を無駄にしまい と孫邦はみずから孫雄の母をおいて扉を閉めてしまう。 その時、孫雄は扉越しに刺殺される母の姿を見てしまったのだ。 理由はどうであれ、玲氏は母を助けようとしたが父である孫邦が助けず母を 見殺しにしたという事実を孫雄は今もここに秘めている。 「それから、孫雄を呼び王の誤解をとこうとしたのだが彼自身は恨んでいない  母が残してくれた命、立派な王子となり兄上たちと共に区に尽くすと、、  王も私も安心していたのだ。それが、、、」 「それが?」 「ある日、、きいてしまったのだ。家臣の一人が孫雄殿と刺客とが王の暗殺を  話しているのを、、、」 <「御意、孫雄様。予定通り手下の者に伝えておきます。」」 「すまないな、、、。私にはまだ力がない。  だが、時は待ってくれぬようだ。  また、あの王が至らぬことを考えていたらしい。」 「六か国同盟ですね。」 「そうだ。そんなもの。起これば六国の民は窮地に立たされる。  我が母のように民を見殺しにはできぬ。」 「急いで手はずを、期日は?」 「10日後だ、、、」 「御意、、、」> 「それを家臣は私の側近だった。王に伝える前に私に伝えてくれた。  そして、王派の信頼できる将・昇楼君にひそかに動いてもらい。  どの刺客かは確定できたが、あやつはほどなくして殺された、、」 慶達はそのまま立ち尽くしていた。 「きっとやつは、貴殿らにその刺客の討伐を依頼しようとしていたのだ。  いつぞやの鄭の猛将の息子にな。  鄭が滅んだ後も貴殿の事を気にしておったぞ。  一族があんな殺され方を味方の軍にされ、その息子は生きている。  息子は無事だろうかとな。  生きて会っておれば親父殿の戦での話を聞かせてやりたいと言っていた」 「昇楼君殿、、、、」 「、、、それでだ。  貴殿らに改めて依頼がある。その刺客及び孫国王子・孫雄を捕まえ私の  元へ連れてきてほしいのだ。もちろん、戦いになりたくさんの被害が予想  される。  報酬は約束しよう。他国ではあるが国運がかかっている。  昇楼君が認めたそちらにお願いしたい。」 「、、、、、」  李郭は黙っている。 「一日、待ってもらえませんか?皆と話して決めたいのです」 「わかった、、、、例の10日までに後、5日ある。いい返事を待っているぞ」 慶達は宿営地へ戻り、会議を開いていた。夜まで話し合いは続いている。 そして、その平原に複数の何者かが近づいている。 「ここか、依頼を受けた者たちがいるのは、、、」 「間違いありません。」 「よし、寝静まってから実行する。」 「はっ!」 彼らはまた平原に散っていった。 孫国の城。孫雄は自室にいた。 過去を思い出していた。 <「母上。なぜ僕たちはあの城へ行けないの?」  「父上は国の為に忙しいの一番偉いんだから。   でもきっと、時がたてば会える。」  「本当に?」  「そう、事が落ち着けば迎えに来てくれる、、」  その手には彼らに向けた文があった。  「うん。僕うんと強くなって父上をさせるよ」  「良い子ね」  そして、あの日、、、  刺客に襲われ扉の奥に孤立する。孫雄の母。  「母上!!」  「雄!いいですか!父上を支えるです」  刺客の刃が孫雄の母の体を貫く。  「もう、虫の域だ。王覚悟!」  「すまぬ。凛(りん)!許せ!」  「旦那様、本当に凛を見捨てるのですか!私にとってもかけがえのない妹      のような子です。お考え直しを、、、」  「助けれるなら、、、、助けている、、、。今の私では無理なのだ。   だが、私は国の為、、生きなければならぬ。許せ!!凛!!」  「母上!!父上、お願いです助けてください!!」  「ええい!雄よ。どけ!」  「ははは、何もめてんだ!!死ね!!」  「旦那様!!早く!!」  孫邦は扉を閉じた。その奥には無残に切りつけられる音がしばらく続いた  孫邦・孫雄・玲氏生き残った3人はその場でしばらく動けなかった。  「雄、、、、私が憎いだろう、、、死ぬほど憎いだろう、、、。   恨め、、お前だけにその権利がある。お前に殺されるのなら本望だ」  うなだれながらゆらりゆらりと立って孫邦の方へ歩く孫雄。    「おやめください、、、父上、、、。   国の為ですよね。仕方なかったのですよね、、、。こうするしか   なかったのなら、、、、私はあなたを恨みません、、、」  そういいながら、孫邦を見下げる孫雄。  それを見て孫邦・玲氏は恐怖する。孫雄のその目は殺意に満ちていた。> (あれから、7年たちました。母上。    文を読み武を鍛え時を待っていました、、、、  ずっと、あれから父上を見てきましたが、もう、、、我慢なりませぬ。  あの男は国の民より国益を優先し、終いには周辺国を事実上支配し、  多くの地域の民を困窮させようとしています。  これは私と母が望んだ父上ではない!!  あの時も母の意志があったから思いとどまりましたが、、、、    もう限界です、、、  私が、、あの男を殺します、、、そして、民に安息の地を、、、)  「孫雄様、、。例の者たちの宿営地に夜襲を掛けます。」  「ええ。お願いしますよ。」  「御意。」  (どこの誰だかしらないが、邪魔者は死んでもらいます。)  深夜、複数の人影が宿営地を駆け回る。  中心地に慶ら幹部たちの兵舎があり見張りのみを暗殺し集結する。  そして、突入するとそこには誰もいない、、、  「どういうことだ、、、」  「やっぱり、刺客の内通者が王子以外もいたってことか。」  振り返ると慶達が立っていた。  「なぜ、、、」  「そりゃあ、これぐらい警戒するさ。国を掛けたことだからな。     敵側に誰か潜ませても不思議じゃない。そして、そいつは俺たちが   この話を聞いてる事を知ってる人物だ。   じゃあなきゃ。こうやって夜襲かけてこねえからな。」  「お手柄だ。李郭殿。」  孫国の騎兵が現れた。  「お前は、、、大将軍・双唐(そうとう)。なぜここに、、、」  「そりゃあ、なぜって。皇后様も俺も彼らにさっそく協力したからだろう」  「そういうことだ。」  「おのれ、、、。だましたな!」  「うるせえよ。李家をなめんなよ。こんな策でもねえような事させやがって      昇楼君殿。お墨付きの実力だ。」  「ならば、、ちょうどいい。王派にはまとめてここで散ってもらう。」   すぐそこの小山で騎兵隊が現れる。  「あれは、、」  「流洞(るどう)、、、」  「唐双大将軍。しばらくだな。   東の戦地にいると聞いていたが内乱に巻き込まれたか」  「あんたこそ。いまだに、こんなことやってんだな。猛将級の実力を   持ってるくせしてもったいない。国の為に使ったらどうだ。」  「ははは、それも悪くない、、だが、こんな事とは心外だな。   裏で何が起こっているのかも知らずに、、相変わらず気楽な男だ。」  「!どういうことだ?」  「ふん。やはりしらぬか。      いいだろう。一つだけ教えておいてやろう。   これがただの内輪もめと思わぬことだ。」   流洞の騎兵隊は反転する。  「今日のところはこっちがひいてやる。   だが、5日後に王の命はいただくぞ。お前たち行くぞ」  彼らは退却した。  翌日、  慶達は再び皇后のもとへいた。  「流洞将軍が、、、敵の手に、、、、」  「ええ、これはかなりの痛手です。正直、彼ほどの猛将はこの地はいないで      すから。」  「あと、色々調べがつきました。孫国内の軍のうち複数の軍が流洞将軍に   着き、翌朝から姿を消しました。」  「相手は、刺客も軍も持っていると、、、、」  「孫雄様にそんな力が、、いつから、、、」  「ずっとまえから、準備していたのでしょうね。やられました。」  「事が大きくなる前に王へ報告した方が。」  「王は六カ国同盟軍の事でずっとこもっておられる。」  「六か国同盟。本当に必要なのか。それが、引き金ともいわれているぞ。   唐双。」  「私は孫の将です。どうであれ。王の決めた事。同盟は変える事は出来ない   が内容を皆で変える事はできると思います。ですが、締結が速すぎて混乱   を招いてる。      先々民が困窮しない政策作りをやって行けばいいだけの事です。」  「そうですね、大将軍の言う通り。同盟が民を苦しめてはならない。   とにかく、この事態を落ち着かせましょう。そのためにも応じ一派を   捕まえなくては」  「軍を投入する寸前でいる以上。対戦は避けなければ。   なるべくなら、軍を使わずして。」    
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