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「あぁ、ゆり?私」
「ナツ、どした?珍しいじゃん。また何かあった?あの彼氏とは別れたの?」
「・・・いや、それが今その彼と同棲してる」
「マジで?どういう経緯でそうなっちゃったの?束縛きつくて別れたいって言ってたじゃん」
「そうなんだけど・・・」
ナツは今までのことを全てゆりに話した。
「ふーん、でもさあ。そのストーカーってさ、姿は見たことないんでしょう?電話や手紙だけだよね?何か変じゃない?」
「変って?」
「だってさあ、ストーカーってさ、自分の存在を相手に認めてもらいたいから、相手の目の前に現れて自己主張するんじゃないの?」
それはそうだ。以前にもストーカーに遭ったことがあったが、その男はナツの行き先々に姿を現してはナツにつきまとっていた。
「彼氏の自作自演だったりして~」
「まさか!マキくんが自分でストーカーを演じてたって言うの?」
「あり得なくない?」
「ないない。だって、その時間帯、マキくん、仕事だったんだもの」
「そっかぁ。あたしの勘違いかあ」
「そうだよ」
その後は他愛もない話をして、その日は電話を終えた。
その数日後、ゆりは事故に遭った。
ナツが病院に駆け付けた時は、面会謝絶でかなりの重体らしかった。
その後、彼女が植物状態になったことを知った。ついこの前、電話で話したばかりなのに。
どうやら、ゆりは信号待ちで誰かに押されて、車にはねられたようで、その犯人は今もつかまっていないということだった。許せない。親友をこんな目に遭わせるなんて。
やはりマキオとの生活はうまく行かず、ナツはマキオに同棲の解消を求めた。
「どうして?ナツ」
「ごめん、マキくん。私達、少し距離を置いた方がいいと思う」
ナツは自分のアパートに戻ることにした。
ドアポストにまた白い紙が挟んであった。恐る恐る、ナツは手に取る。
開くと一言、書いてあった。
「おかえり」
こいつは、私が家に帰ってきたのを知っている。どこかで私を見張っているのだ。
それからも、怒涛のようなストーカー行為が始まった。
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