STAY HOME

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そのあくる日、ナツはマキオを追求した。 「私がどんな怖い思いしたか、わかってんの?あり得ない!」 「だってぇ、ナツは俺に冷たいんだもの。俺がこんなにナツを愛してるのにさぁ。なんで?なんで俺から逃げようとすんのぉ?ナツ」 「逃げようとなんてしてないよ。マキオの束縛がきついから息苦しかっただけ」 「束縛がきつい?当たり前じゃん。俺以外の男と話すとか、想像しただけでも、ハラワタが煮えくり返るんだよね。女もダメぇ。ナツは俺だけ見てればいいのー」 「頭、オカシイんじゃない?」 「あの女もさあ、バカだよねえ。俺のナツに余計なアドバイスをしようとするから、あんなことになっちゃってさあ。自業自得だよねえ」 「え?なに?」 「頭きたからさあ、トンって押したらさあ、あの女、気取ってハイヒールなんて履いてるからさあ、面白いように前のめりの転んじゃって」 マキオがクスクス笑い始めた。 「嘘でしょう?まさか、アンタが、ゆりを・・・」 「あの女は悪魔だよ。だから退治したの」 「人殺し!」 「俺はナツのためだったら何でもできるよ?人殺しもねえ」 「ち、近寄らないで!」 「そんな冷たいこと、言うなよぉ。愛してる、ナツ」 ナツが逃げようとすると、腕を掴まれて押し倒された。マキオの手には手錠が握られていた。 その日からナツはずっと、この部屋で監禁されている。 仕事はマキオが勝手に職場に辞めると電話した。 「さあ、ナツ、ご飯だよ。ちゃんと食べないとだめだよ?」 左手は手錠で柱に繋がれているので、右手だけで食事をしなくてはならない。 大声を出して助けを求めようとも思ったが、その度に刃物で脅され、首を絞められたこともあって、恐怖で全てを諦めてしまった。 この男は狂っている。 マキオは自分も仕事を辞めて、今は貯蓄を切り崩して生活をしている。私を監視するためだ。 このままでは、私に未来はない。全てを諦めて、マキオの言う通りにした。 すると、徐々に束縛が解けて、手錠で繋がれることはなくなった。 マキオは、完全にナツを支配したと思っていたが、そうではない。 だから、こうして、今、ナツは、眠っているマキオの後ろに立ち、まさに包丁を振り下ろして突き立てようとしているのだ。 マキオに永遠のSTAY HOMEを贈るために。
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