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当選メール
『おめでとうございます!
rakuraku1568-sitasita@XXXXXX様は、百万円の当選者に選ばれました!』
ああ、ありがちなヤツね。大学生の俺は携帯電話に来たそのメールを見て苦笑した。ちなみに此処は学校。予定していた講義が一つなくなってしまったせいで、食堂で軽食を取りつつまったりと時間潰しをしていたのである。
時々来るのだ。今時誰も引っかからないだろう、と思うような“当選おめでとうございますメール”が。要は迷惑メールという奴だ。その証拠に、俺の名前はどこにも記載されていない。rakuraku1568-sitasita@XXXXXXというのは確かに俺のメールアドレスだが、本当に当選したというのならば俺の名前が宛先にないのは不自然極まりないだろう。
要するに、ランダムで相手がメールアドレスを組み合わせて送信し、たまたま俺のアドレスが引っかかるなりなんなりしたので受け取ってしまったというそれだけのことである。あるいは、誰かスマホを落とすなり情報流出した奴がいて、俺のアドレスだけ知られてしまったという可能性もなくはないのだろうが――まあ、その場合なら名前が入れられてないというもあるはずがないし、やっぱりランダム送信の方が可能性が高いだろう。
――百万円ってのがミソだよなあ。これが一億円とかだったら、かえって現実味なくて信じる人間も減りそうだしよ。
ちなみにこのテのメールは当然のように、文章の下の方に“本日中にご連絡がなければ、権利は他の方に譲渡させていただきますので予めご了承ください”みたいなことが書いてあるわけである。そういう期限を設けることで、考える時間を奪おうというのが狙いというわけだ。とにかく焦らせて、さっさと返信しないとお金がなくなってしまうかも!と思わせるわけである。だったらもう少し、現実的な文章を考えろと思わなくもないのだけれど。
果たしてこういう迷惑メールというやつは、一体どこの誰が考えて発信しているものなのだろうか。
基本的な目的は、相手の個人情報を盗み出すことか、エロサイトに誘導して広告料を取るか、詐欺にひっかけてお金をだまし取ることであると聞いたことがある。多分これがそうなんだろうな、というサイトアドレスがメール本文に記載されている。ご丁寧に“お受け取りはこちらから!”という文言付きでだ。
本当にお金が貰えるとは、俺も全く思っていない。思っていないが、迷惑メールを送りつけてくる相手の目的や心理というのは少々気になるところである。今年は講義の時間の都合で取ることができなかったが、二年生になったら心理学の授業は是非受講してみたいと思っているところであったのだ。何をおいても、人間の心理ほど面白いものはない。社会に出てから人とコミュニケーションを取るにあたっても、きっと役に立つのだろうと思っている。
高校時代はあまり真面目な生徒でなかった俺だが、大学はちょっと偏屈な講義が多くてやっていて飽きるということがないのだ。一年生のうちにある程度学科専門系の科目を取ったら、二年生はもっと一般向け講義もやってみたいと考えている。せっかく苦労して入った大学、好きな授業は取れるだけ取らなければ損というものだ。
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