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「やめて!お願い!はなして!」
大好きなカナちゃんが泣きそうな声で叫んだけど、意地悪な気持ちだった僕は気にせず思い切りひっぱった。右手にもった白いふわふわな長い布。綿が入っているけれど、それほどたくさんじゃない。口をへの字に曲げて、強く握りしめたらびりっびりりっと音がした。
まずいと思った時には遅かった。泣きそうだったカナちゃんの目からは、大粒の涙がこぼれてくる。
「ひどい。ひどいよ。けん君!」
白い大きなぬいぐるみに顔を埋めたカナちゃんが体を震わせて泣いている。僕は白い布を持ったままごめんも言えずに突っ立っていた。ちょうどまわりには誰もいなかった。僕は白い長い布を持ってそのまま走り出す。カナちゃんから逃げるようにして走って行った。
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