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怒ってた僕の心の中に、だんだんもやもやとしたいやな雲が浮かんでくる。カナちゃんが大事にしていたうさぎのぬいぐるみ。片耳やぶれて一つは僕がもってる。きっとすごく泣いて今度は怒るだろう。僕のこと嫌いになったかもしれない。
涙がこぼれそうになった僕は、慌てて白いウサギを抱きしめた。ふわふわでほっとする。値札をちらっと見たら、僕の貯金箱にあるお金じゃ足りなかった。ゆっくりぬいぐるみを棚に戻して、やぶれたうさぎの耳をぎゅっとつかむ。おもちゃがたてる音と子どもたちが笑う声の中で、僕はぽつんとひとりぼっちの気分だった。さっきよりもぎゅっとうさぎの耳をつかんでいると、誰かが僕の隣に立った。
「君、ひとり?」
僕の心臓がどきんと跳ねる。僕が一人だって気づいたら、きっと迷子センターに連れてかれて家に電話されてしまう。僕は家に帰るのがどうしてもいやだった。帰ったらきっと怒られる。いっぱいいっぱい怒られる。何とかごまかそうと思って頭を上げてぽかんと口を開けた。
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