ワークブーツに愛されて

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「手入れもしてくれてたしね……一応だけど」  手入れって事は……彼女らはワークブーツか。  あれは革製だし、それしか持ってないから手入れは欠かせない。  なんせ、デートであってもアレしかないから。  それにしても、あんなごつい系のがっちり靴なのに、何ゆえ幼女姿を取っているのか。  そんな俺の疑問にお構いなしで言い合いは続いている。 「一応って事はないでしょう。愛情込めて手入れしてくださったじゃないの」 「どうだろうね……」  どうやら左子は俺の手入れに不満があるらしい。  左右しっかり同じように手入れしたつもりだけど。 「もう、この子ったら……。すみません、ご主人様……。いったい何が不満なのかしら……」 「……知ってるくせに」  左子の目に涙が浮かぶ。 「自分の方がご主人様に愛されてるからって、いい気にならないでよ!!」 「いい気に何てなっていないわ。誤解よ。あなただってちゃんと愛されてる。ねえ、ご主人様?」  俺は慌てて頷いた。巻き込むなら事前に予約してくれ。 「ほら、ごらんなさい。ご主人様もこうおっしゃってるわ」  何にも言ってないけどね。 「ふん、口だけなら何とでも言えるだろ」  だから、何も言ってないってば。 「一体何が不満なの? ちゃんとお言いなさい? ご主人様もちゃんと聞いて下さるわ」  え、聞かなきゃダメですかね?  ちょっと面倒くさそうなんだけど。 「いいよボクなんて。どうせ愛されていないんだから」 「そんな事無いわ。私達は靴なのよ? 二つで一つじゃない。どちらかに愛情が偏るなんて、おかしいと思わないの?」  その通りだ右子。よく言った。  ていうか、面倒くさいから一足で人格一つにして貰いたかったぐらい。  いや、そもそも靴に人格がどうこうってのがもう……。
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