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「二つで一つ……。そう言えば聞こえはいいけどね。片方が本命で片方はおまけ。そういう関係性だって、あり得るんじゃないのかな? 歩くために仕方なく引っかけてやってる、的な」
靴にそういう感情を抱いたことはないです、はい。
「ボクが二人の関係に気付いていないとでも思っているの? そんな間抜けだと?」
左子? 何を言ってるのかな?
無い物には気付けないはずだよ。
「誤魔化しても無駄だよ。水たまりも、ぬかるみも、でこぼこ道だってそう。いつだってボクが最初に突っ込まされる。手入れされるときだってそうさ。僕の方がいつだって磨いて貰える時間が短いのに気付いていないとは言わせないよ?」
……ごめん、マジ気付いてない。
「脱ぐときだってそうさ。いつだってボクは斜めに置かれるんだ。他の靴達がきちんとお行儀よく並べられているってのにさ。ボクがいつもどれだけの屈辱に曝されているか……。ボクが周りから何て言われているか知ってる? 君みたいな斜め好きを履いてまっすぐ歩かなきゃならない御主人は、きっと毎日内股を筋トレしている気分だろうねって言われるんだ!!」
「そんな……酷い」
俺の心には一ミリも響かなかった言葉だが、どうやら右子さんには……いや靴的にはかなりの侮辱的台詞だったようだ。内股の筋トレって良い事なんだぜ?
「ねえ、ボクの事もちゃんと見てよ。ボクだって靴なんだ。同じように愛してよ!!」
「えーと……その」
どう返事するのが正解?
「あなたの心が傷ついている事は良く分かったわ。だから、真っ直ぐに揃えて脱ぐぐらいはご主人様も今後気を付けるべきね」
右子さん?
どうして突然隣にやってきて、私の腕を抱きしめるのですか?
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