出会い

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そんなわけで、短い冬休みの間、悶々と彼女のいない自分への嫌気と葛藤していた俺は決心をした。「そうだ、ナンパをしよう」。 幸いながら俺の通う大学は学生の民度にそぐわず比較的高偏差値で、集まる生徒も色んな意味でハイレベルな連中ばかり(頭の良さやスペックと人間の出来っていうのが必ずしも一致しないという好例ともいえるが)。 今まで、「硬派」を気取っていた俺は(実際は「硬派」と書いて「奥手のコミュ障」と読むのが正しいのだが)手を出すのを躊躇っていたが、ここまでくればそうも言っていられない。 「三馬鹿の彼女いない奴」なんて認識のされ方をしては俺の沽券にかかわる。 そんなわけでナンパ相手を漁りに講義開始10分前という絶妙のタイミングで大教室へと意気揚々と入っていったわけなのだが、そんな俺の目に飛び込んで来たのは、衆目の中にも関わらずイチャコラしまくる大量の色ボケカップルども。 それもそのはず、この冬休み前後という期間はクリスマス・年越し・初詣などのイベントも手伝ってカップルが雨後の筍のごとくぽこじゃか乱立する季節である。そして彼ら彼女らは、そんな冬休みのイチャイチャな空気を大学が始まってなお、教室にまで持ち込んでくるのだ。 あまりの濃密な色ボケオーラに流石の俺もくらりと眩暈を感じてしまう。 「やってらんねえ‥‥‥」 仕方なく俺は甘ったるいバカップル群生地を抜け、陰キャ&不真面目学生御用達(偏見)の教室後方の座席を目指す。 苛立ちと虚無感に潰されそうになりながら階段を上っていく最中、俺は思わず足を止めた。
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