出会い

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視線の先、階段教室の最後方の座席に肩肘をついて気だるげな表情を浮かべ手元を見つめる一人の女子の姿を目にした瞬間、雷に打たれたような衝撃が俺の全身を走る。 つやつやとした長い茶髪はふんわりと巻かれやわらかな印象。太い黒ぶちの眼鏡の奥の伏し目がちな瞳は黒く艶めく美しい睫毛に縁どられながら紫紺に輝いており、アンニュイな印象を与える。 落とした視線の先にあるモノはこの位置からでは見えないが、切ない悲恋を描いた恋愛小説か何かかもしれない。 いや、単に女子ってそういうの好きそうだなー、という俺の偏見に基づく推測だが。 俺は急いで辺りを見回す。これで声を掛けてみて、実は彼氏が後から合流、バカップルの片割れでしたなんてことだったら、いよいよ俺は憤死するかもしれないからだ。 しかし辺りを見回しても、幸い男の気配はない。もっと言えば女の気配もない。 確かに目の前の眼鏡女子からはどこか近寄りがたい雰囲気が―――というより全力で人が近寄って来るのを拒否するような「近寄んなオーラ」を出しているようにも見える。 若干そのオーラに飲まれそうになるが、ある意味でこれは逆にねらい目だ。 あれだけ「近寄んなオーラ」を出しているということは彼氏持ちではないだろう。そして当然ながら(?)恋愛慣れしているとも思えない。 つまり、ナンパする(こちら)側に圧倒的有利な状況というわけだ。これは勝ち目があるかもしれない!
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