出会い

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「じゃ、じゃあインスタ! インスタのアカウントは!?」 最後の手段のインスタグラム。会話すること前提なLINEや交友関係や趣味がつぶやきから丸見えになりかねないTwitterと比べ、インスタグラムのメインは写真や動画、しかも見る専もかなりの割合だと聞く。関係を進展させるには少し弱い気もするが、連絡先交換のハードルは他のSNSよりも低い気がする―――あくまで自分の独断と偏見だが! 「だから無理。悪いけど構わないで」 相変わらず手元から目を離すことなく、芽玖璃はぴしゃりとこちらの誘いを一蹴する。 「な、なんで!? え、え‥‥‥訳わかんないよ!? どうしてだよ!!」 あまりにも無体な対応に思わず声を荒げてしまう。それでもなお、めぐりは手元から視線を離そうとしない。その無機物のような淡白な反応に、ふつふつと苛立ちがこみ上げる。 ———こいつには礼儀の一つでも教えてやらねば。 ナンパを仕掛けた男がどの口で言うのか、と言われればそれまでなのだが、それでもこの憤懣たる胸の裡の炎は、目の前の女にガツンと言ってやれと俺自身に訴えかけてくるのだ。 「ちょっとはこっちに顔くらい———」 怒りに任せて彼女の視線を独占するその手元の何かに向けて手を伸ばした瞬間だった。
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