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僕は急いで仕事場に戻り、SVに言った。
「すみません、急用ができたので帰ります! それと、すみませんが、月末まで休みます。最終日にハンコ押しにきます」
5月29日。僕は勤怠表にハンコを押すためだけに出社し、会社を出た。
初夏の風が僕の肩を撫でた。
緊急事態宣言が解かれた街は、元の喧騒を取り戻しつつあった。
僕はマックへ入り、ビッグマックセットを注文しようとして……チキチーセットに変えた。
「来月の給料はほぼ3日分減るもんな、節約しないと」
店内では、サラリーマンやOLがくつろいでいる。
見慣れた風景が戻ってきて、ほっとする。
だが、バーガーを食べながら、何だか心が落ち着かない。
何かが引っかかる。
なんだろう、このもやもやは。
――僕は、気づいた。
今月分に、交通費¥25,000を足すのを忘れていたのだ。
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