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「どこ行くの?絵、いらないの?」
「どこでもいいだろ。いらないよ。それをあんたが描いたってばらしたら俺がやったこともばらされそうだし」
木戸君は振り向かずに不機嫌な声でそう言います。
「人の知られたくない情報流すのとか、そういうの以外だったら仲間になるからね!」
そう言ったら、木戸君の動きが一瞬ぴたりと止まりました。そうして少しの沈黙の後、こっちを見ていらねぇよ、と言ってドアをぴしゃんと閉めました。
去っていく木戸君の足音を聞きながら、私はぎゅっと絵の入った鞄を握りしめました。
そうして、少し、ほんの少しだけ、あの歪な絵を認めてくれた人を拒んでしまったことを悔やみました。
完
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