消えない影は鏡を探してる

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「わ、私はやりたくな……」 断ろうと口を開くと、すぐに木戸君の声に遮られました。 「断ってもいいけど。優等生で誰にでも優しい入江さんが、裏ではクラスメートが血まみれになって苦しむとこと描いてるなんて知ったら、みんなどう思うかなぁ」 痛いところを突かれて黙るしかなくなりました。 そうです。私はクラスメートをモデルに絵を描いていました。釜で煮られる様子。針の山に登らされている様子。鬼に拷問を受けている様子。 私が断れないと知って無理な頼みごとをしてくる度、先生に媚び売ってるんじゃないのと影口を叩かれる度に、私は私の描いた地獄にその人たちを放り込みました。 「まぁ、今日はいいや。考えておいてよ」 木戸君はそう言って後ろを向きました。 心臓がバクバクいって、どうしたらいいかわからなくなりました。
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