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……波乱もなにも、それが台本だ。
真剣勝負に見せかけた、プロレスという劇の台本。
(俺は卑怯なデビルタイガー)
……そういう「役」なら演じるまでだ。
握手に応じるフリをしつつも、
不意打ちで肘を叩き込み、
ひるんだ相手の頭を掴んで頭突き、膝蹴り、ビンタを入れる。
観客からは大ブーイング。
そこで初めてゴングが鳴って、「試合開始」という展開だ。
「外道ですっ、デビルタイガー! ルール無用の大暴れ!」
ブーツの中に忍ばせていた、「スパナ」を使って攻撃するも、
審判に取り上げられるタイガー。(ボディチェックとはなんだったのか)
ヨロヨロになったヤマネコマスクの身体をロープに向かって投げて、
跳ね返って来るところ目がけて「豪腕ラリアット」をブチかます!
……だが、その丸太のような打撃をぎりぎり躱したヤマネコマスク、
振り向きざまに飛び上がり、
「おおっと、『回転浴びせ蹴り』っ!」
白いマットがズシンと響く。
(先輩からの大ワザは、当たっていようが当たっていまいが『効いている』ように振る舞うものだ……)
頭部を押さえて苦しむ俺に、
——オラ! どうした、かかってこい!
——おまえの根性はその程度か!
力の入ったアナウンサーが、ヤマネコ目線でセリフを叫ぶ。
「ヤマネコマスク、ブチ切れました! 怒りのチョップで反撃です!」
ビシッ、ビシッと手刀の嵐。
ロープ際まで追い詰めたなら、
ついに必殺「ドロップキック」が飛び出す場面がやってきた。
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