1.白いヒーロー

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そう言いながら現れたのは、 柴又ビッグブーツ女子部の 「バズーカ関口(セキグチ)」さんだった。 「戦場帰り」の通り名を持ち、タンクトップに迷彩ズボン。 長い茶髪は爆撃を食らったようにチリチリ飛びハネている。 「うるせー、これも『教育』だ!」 「はそうは思っちゃいないよ!」 見れば試合が終わったばかりの女子プロ組の(ねえ)さん方が、ぞろぞろ部屋に入ってきた。 「オイ、おめーら、言ってやんな! 山根(ヤマネ)は後輩イビリのクズだ!」 関口さんの号令に、「そーだ、そーだ!」と声を(そろ)える、 紅天狗(ベニテング)さん。 白髪鬼(はくはつき)さん。 ユンボ尾崎さん。 イボ・コングさん。 ……みんなみんな、キャラが濃い。 「前座は引っ込め、ヤマネコマスク!」 「ウチら(トラ)ちゃんの味方だかんね!」   「だって可愛(カワ)い〜んだもん、ね〜っ!」 ただでさえ狭い部屋の密度がレスラーたちで高まり過ぎて、蒸し風呂みたいになってきた。 「オラッ、ブスどもあっち行け!」 「なんだとキンタマ握り潰すぞ!」 「じゃあね〜(トラ)ちゃん、また今度〜」 (ねえ)さん方がキャアキャア騒いで俺たちの前を去った後。山根(ヤマネ)先輩は気を削がれたか、それ以上叱ろうとしなかった。 「あの……なんか、すいません」 「いいよ、もう……ヤメだヤメ」 拗ねたようにそう呟いてから、 またもドッカりあぐらをかいて、俺に湿布を貼らせ出した。 「……まあ、たしかに、おめーの(ツラ)は、俳優みてぇにオトコマエだよ」 ……だからって調子(チョーシ)乗るんじゃねーぞ? おまえはオレの弟分。 その辺、しっかりわきまえろ。 って、(イテ)テテテ……なにしやがんだっ!
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