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そう言いながら現れたのは、
柴又ビッグブーツ女子部の
「バズーカ関口」さんだった。
「戦場帰り」の通り名を持ち、タンクトップに迷彩ズボン。
長い茶髪は爆撃を食らったようにチリチリ飛びハネている。
「うるせー、これも『教育』だ!」
「みんなはそうは思っちゃいないよ!」
見れば試合が終わったばかりの女子プロ組の姐さん方が、ぞろぞろ部屋に入ってきた。
「オイ、おめーら、言ってやんな! 山根は後輩イビリのクズだ!」
関口さんの号令に、「そーだ、そーだ!」と声を揃える、
紅天狗さん。
白髪鬼さん。
ユンボ尾崎さん。
イボ・コングさん。
……みんなみんな、キャラが濃い。
「前座は引っ込め、ヤマネコマスク!」
「ウチら寅ちゃんの味方だかんね!」
「だって可愛い〜んだもん、ね〜っ!」
ただでさえ狭い部屋の密度がレスラーたちで高まり過ぎて、蒸し風呂みたいになってきた。
「オラッ、ブスどもあっち行け!」
「なんだとキンタマ握り潰すぞ!」
「じゃあね〜寅ちゃん、また今度〜」
姐さん方がキャアキャア騒いで俺たちの前を去った後。山根先輩は気を削がれたか、それ以上叱ろうとしなかった。
「あの……なんか、すいません」
「いいよ、もう……ヤメだヤメ」
拗ねたようにそう呟いてから、
またもドッカりあぐらをかいて、俺に湿布を貼らせ出した。
「……まあ、たしかに、おめーの面は、俳優みてぇにオトコマエだよ」
……だからって調子乗るんじゃねーぞ?
おまえはオレの弟分。
その辺、しっかりわきまえろ。
って、痛テテテ……なにしやがんだっ!
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