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「お前が授かった天恵はなんだ?ん?」
神がユージに顔を近づけるとユージは顔をそらした。
だがそれを許すまいと神はユージの頬を掴んだ。
そして問いに答えないユージの代わりに答えた。
「『不幸体質』だよなぁ!?お前が一緒にいたせいでアイツらは死んだ。違うか?」
ユージは答えなかった。だが代わりに刺し殺さんという程,睨み付けていた。
その様子に感心した風な態度を見せると,神はユージから手を離した。
「なら誰のせいだ?言ってみろ」
「お前たちのせいだ。お前たちが……お前たちがこんなことをしなければ誰も死なずにすんだんだ!全部,全部お前たちのせいだ!」
「そうかそうか」
腹の底から叫んだ。怒りをぶつけた。
しかしその怒りは―――叫びは神には響くことはなかった。
神はユージの周りをぐるりと回ると近くにある椅子に座り,肘をついた。
「責任転嫁をするなよ。過程はどうあれ結果的にアイツらを死に導いたのはお前だ。なに自分のやったことから目をそらそうとしてんだ?まぁ,頭をいじくって円滑に進めるようにしていたヤツもいるけどよ,結局俺がお前に与えたのはきっかけにすぎない。この結果を選んだのはお前だってことだ。わかったか?」
「違う―――僕はこんなこと望んでなんか―――」
突然辺り一帯が光った。
おもわずユージは手で目を覆った。そしてゆっくりと手を退けると目の前に青年の姿をした神と同じように光輪と光の羽をもった者たちがいた。
「ま~さか君が生き残るなんてねぇ~。驚きだよぉ~」
「本当ですよー。あんな天恵で残るなんてなにかしましたね?」
方やユージに興味を示し,方や青年姿の神に探りを入れるように辺りを飛んでいた。
ユージは驚きと恐怖で動くことが出来なかった。だが青年姿の神は動じることなく,それどころか小馬鹿にしたような態度を見せた。
「なんだ?文句でもあるのか?」
「文句しかありません。アチシの決めたルールを破ってただで済むとでも?」
「クッ……ククク,ハハハ,ハハハハハ!」
青年姿の神は天を仰ぎ笑った。
「なにが可笑しいのですか」
「いや,別に」
「説明してください!」
「しょうがねぇな」
椅子から立ち上がると青年姿の神はユージの元へと移動した。
「いいか。俺様はルール違反なんてしてねぇ。俺様はコイツに天恵を与えただけだ」
「だったら―――」
「おいおい話は最後まで聞けよ。まだ終わってねぇだろ」
青年姿の神はユージの頭に肘を置くと,小馬鹿にしたような態度で語りだした。
「そもそもルールはなんだ?1,駒を決める。2,その駒に天恵を与える――だろ」
「そうです。だから文句があるといっているのです。『不幸体質』ではどうやったって勝てるわけがない。貴方が何かしたのは明白です」
その返答に青年姿の神はため息をついた。
「まだわかんねぇか?ここまで言って」
「どういうことですか」
「あーもういいや。教えてやるよ。いいか?俺様はコイツに天恵だけしか与えていない。お前と違ってな」
「いいががりですか」
「違う違う気にするな」
面倒くさそうにあしらうと青年姿の神は続けた。
「俺様が与えた天恵は『不幸体質』それと『奇跡』だ」
「奇跡……?」
身に覚えのない天恵にユージは困惑した。
そんなユージに興味を見せることなく青年姿の神は更に言葉を続けた。
「ホント,お前らってバカだよなぁ。言葉通りに受け取らずねじ曲げて解釈するんだからよぉ。誰が天恵は一人につき一つまでって言っていたよ。誰も言ってねぇよなぁ」
「そんなの普通に考えれば―――」
「だ~からバカだって言ってんだよ。相手が言葉を深読みしてくれるなんて思うなよ。言ったことだけが全てだ。後からあーだこーだ言う方がルール違反だろ?」
その言葉に相手の神は反論することが出来なかった。
「まぁ賭けだったけどな。天恵はなにが出るかは分からねぇ。もしかしたら更に不利になる可能性だってあったわけだ。だが俺様は引き当てた,最初から運は俺様にあったってわけだ」
認めたくはなかったがこれ以上無能をさらすわけにはいかない。
相手の神は一度深呼吸をして,気持ちを落ち着かせた。
「わかりました。今回はアチシたちの負けでいいです。ですが今度は同じようにいくとは思わないことですよ」
「安心しろ。次もお前たちを出し抜いて勝ってやる」
二人?の衝突は終わった。
これでめでたしめでたしとなる―――はずもなかった。
「ねぇ~この子どうするの~?」
二人?の会話に興味を示すことなく,ずっとユージを見ていた神が声をあげた。
「そういや忘れてたな。いいぞ帰って。もうお前に用はない」
青年姿の神が指を動かすとユージの身体は光に包まれ宙に浮いた。
「待っ―――――」
「お前の祖母も返してやる。喚くな」
「―――ッ僕はお前たちを絶対に許さない!絶対に絶対に絶対にだ!」
「おーそうか。覚えてられるといいな」
消える寸前、ユージは全力で魔法を放った。
しかしその魔法は神の眼前で弾けとんだ。
「――――――ッ!!」
そしてユージは光と共に消えていった。
「俺様たちも解散だ。じゃあな」
そう言うと青年の神はユージと同じように光に包まれ消えていった。
こうして闘いは幕を閉じた。
あまりにも呆気ない巻く引き。だが神々にとってはそれでもよかった。
永遠を生きる中での暇潰しの一つにすぎないのだから。
誰が生きようが死のうが関係ない。恨まれようが妬まれようが関係ない。
何故なら全てのモノは神の前では無力なのだから。
創造主に逆らえるモノなど存在しないのだから。
『神』それは人々が生み出した幻想。『神』それは人々がすがる希望。『神』それは全ての誕生の起源。『神』それは頂点に君臨する存在。
『神』それは―――それは――――――身勝手で自由な永遠を生きる全能の子どもである
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