第2戦:それは狂人たりて命を喰らう者とならん

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第2戦:それは狂人たりて命を喰らう者とならん

 今回のゲームの会場はそれぞれの種族の住む世界を切り取り無理やりくっつけてある。  そして開始位置はランダムで始まるようになっている。故にデュークとユキのように近くに配置され,すぐさま出会うということもある。だがそれは逆も然り―――  最初の先頭から約一時間後,小人(ドワーフ)の造った建造物が建ち並ぶ路地を一人の戦士が獲物を探し歩いていた。  戦士の名はガウル・ルーベル―――『獣人』である。  そしてその血に濡れた服を着た傷だらけの戦士は現在、非常に機嫌が悪かった。  それは何故なのか―――理由は簡単,ゲーム開始から今まで,まだ誰とも出会えていないからである。  ゲームが始まってからずっとガウルは歩き続けている。  時にはわざと大声をあげたり物を壊したりしたが,誰も現れることはなかった。 「グルルルル……」  ガウルは飢えていた。それは食に対してではなく闘争に対して。  獣人という種族は戦闘を好む傾向が強く,獣人たちの住む世界では日夜争いが絶えなかった。  奪い奪われ殺し殺されの繰り返し,生まれながらの戦闘狂―――それが獣人という種族だった。そしてその中でもずば抜けて戦闘欲求の強い存在がガウルである。  奪い奪い殺し殺し―――生きてきた。だから神がゲームに参加させようとした時もすぐさま承諾した。人質なんて関係ない。他者は自分の欲求を満たすための道具,生きようが死のうが関係ない。  ゲームが始まれば今まで感じたこともないような快楽を味わえると期待していた。なのに――― 「どこにいる,早く出てこい!オレを楽しませろォ!」  叫び声も只々悲しく響き渡るだけ。  ガウルは怒りに身を任せ,小人の家を破壊した。  そんな哀れな子犬の様子を上空から眺めている,存在が一人。 「フフフ,哀れだねぇ。こんなに近くに君の望む敵がいるというのに。哀れ哀れ。私はここだよ子犬ちゃん」  鳥人(ハーピー):ニコラ・デ・カルメラは空高くからガウルの様子を見てあざ笑っていた。
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