桜の木の下の僕ら

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思えば一目惚れだったと思う。 中学の入学式の日、桜の木の下でゆるくウェーブのかかった髪を風で揺らし、儚げに微笑みながら花を見上げている彼に一瞬で惹かれた。 彼とのきっかけは僕からだ。 彼は遊び人で有名だった。 容姿端麗、成績優秀、運動神経抜群な彼はとてもモテる。 そんな彼に寄ってくる人は大勢いた。 彼は、来る者拒まず去るもの追わずで女だろうが男だろうが関係を持った。 僕はその中の一人だった。 彼は親からの愛を知らない。 彼の両親は愛のない結婚で、息子の彼も愛さなかった。 彼は友からの愛を知らない。 父が大企業の社長で、母が社長令嬢なお金持ちの家に生まれた彼を友人達はその財力や権力しか見なかった。 彼は恋人からの愛をしらない。 全てにおいて非の打ち所がない彼を恋人達は自分のステータスとしか見なかった。 彼は愛そのものを知らない。 勿論、そうではない人もいただろう。 だがそういう人ほど目立つものだ。 彼は心を閉ざしてしまい今の彼になった。 そんな所が儚げな笑みを魅せるのだろう。 僕がそんな彼を救い、愛を教えられるなんて大層なことは思っていない。 けれど、ほんの少しでも1ミリでも彼が愛というものを知ってくれればいいと思った。 そのために彼の親衛隊に入り隊長にまで上り詰めた。 そのおかげか僕は所謂『お気に入り』と呼ばれる中の1人で、一週間に1回は彼からのお誘いがあった。 そして彼とは少しずつ話をするようになった。 その日の楽しかった出来事など他愛のない話をすることもあれば、彼の愚痴や悩みを聞くこともあった。 この学校は小、中、高、大とエスカレーター式のため、高校になってもそれは続いた。 高校になってしばらくした時、彼が突然「好きな人ができた。」と言った。 僕はといえば「やっぱりな。」といった心境だった。 風の噂で彼がセフレを全て切ったと聞いていたからだ。 おそらく彼の好きな人というのは「転校生」だろう。 転校生は彼に面と向かって「セフレと遊びまくるのはいけない。愛を知らないなら俺が教える。」と言ったらしい。 それから僕は隊長として親衛隊の転校生への制裁を止めつつ、彼からの恋愛相談を受けるようになった。 本人から直接好きな人を聞いたわけではない。 けれど、彼の口からでる好きな人の特徴はまさに転校生そのものだった。 そんなことをしていて辛くないのかと問われたら勿論辛いと答える。 彼に内緒でたくさん泣きもした。 だが、僕は真正面から彼にぶつかる事をしなかった。 怖くて逃げ続けてきた僕に悲しむ資格は無いのだ。 そんなある日のことだった。 彼が泣きながら僕の部屋に来た。 校内には転校生と生徒会長が付き合ったとの噂が流れていた。 恐らくフラれたのだろうと思い、僕は嬉しさを堪えきれず、 「好きな人にフラれてしまいましたか? 僕でよければ慰めますよ。」 と言ってしまった。 すると彼は驚いた顔をしたあと、直ぐに真顔になり冷めた目でこちらを見て今までに聞いたことがないような低い声で、 「最低だな。」 と一言いって部屋から出ていってしまった。 彼から言われた言葉が頭の中をグルグルとしていた。 言われて当然だと思った。 僕は彼の幸せがなどと言うくせして、自分の幸せを優先させたのだ。 彼がどんだけ転校生のことを好きか知っていたのに。 僕はなんて馬鹿なことを言ってしまったのだろう。 僕は今までの人生の中で1番と言っていいほど泣いた。 彼に謝ろうと思って電話をした。 だが、彼は電話にでることはなかった。 謝罪のメッセージも送った。 通知がつかず、確認してみるとブロックされたようだった。 僕は学校を休んだ。 気がついたら泣き出してしまうからだ。 その間、彼からの連絡は勿論なかった。 1ヶ月経って、だいぶ落ち着いたので久しぶりに学校へ行くことにした。 目は腫れていてやつれた僕を友達は心配してくれた。 そんな時、彼が見えた。 久しぶりに会った彼も少しやつれてはいたものの、元気そうで笑いながら転校生と歩いていた。 僕の心は、彼を見れた喜び。 未だに転校生を好きな彼への悲しみ。 自分を見てくれないことに対する怒り。 そんなことを考えてしまう情けなさ、やら。 まるでいろんな絵の具の色を混ぜたようにぐちゃぐちゃで黒に染まっていった。 気がつけば僕は泣きながら走り出していた。 周りなど気にせずに、走って走ってふと顔を上げた。 当たりを見回せば綺麗な花が咲いている中庭にただ1人で立っていた。 なんだか無性に悲しくなり、更に涙が零れた。 泣いていると後ろから足音が聞こえたので、振り返って見ると彼が立っていた。 僕は色々言わなければいけない事があるのに、驚いて声がでなかった。 そんな僕に彼はゆっくり近付き、ギュッと抱きしめた。 僕は一瞬、何が起こったのかわからなかった。 そして理解した途端、彼に抱きしめられてる嬉しさの羞恥と情けない姿を見られてしまった羞恥でいっぱいになった。 おそらく僕は林檎のように真っ赤になっていることだろう。 どのくらいそうしていただろうか。 とても長い時間が経ったように感じられる。 僕の涙やら羞恥心やらが収まり何か言った方がいいのだろうかと考えていると、彼が声を発した。 「ねぇ。俺にしなよ。 俺だったら、こんな風に泣かせたりなんかしない。」 「ぇ…? んむっ……!?!?!?」 僕がどういう意味かわからず思わず顔をあげると、彼が僕の唇にそっとキスを落とす。 落ち着いてた羞恥心が戻っきて僕の顔が熱くなる。 「んっ……。むぅっ………んんんっ!!」 彼はその後2回、3回と僕にキスをしてから舌を入れる。 酸欠気味になり意識が朦朧としだし、頭に水音が響く。 僕は気持ちよさに耐えきれなくなり、腰が抜けてその場にしゃがみ込む。 彼はそんな僕をお姫様抱っこで、彼の部屋のベットまで運んだ。 そして僕は何が何だかわからずぼーっとしているうちに、あれよあれよと服を脱がされ後ろを解される。 「ずっとしてなかったけど柔らかいね。」 その言葉を聞いて僕の意識は覚醒した。 彼とえっちをしなくなってからというもの、寂しくて彼を思いながら1人で後ろを使って自分を慰めていたのが思い出され、顔が赤くなる。 「へぇ〜。なに? あいつとのえっちでも思い出してるの? 残念だけどこれから桜を抱くのは俺だよ。」 「何を言って………んあっっっ!!」 何を言われてるのかわからず聞こうとすると、彼が彼の熱いモノを一気に押し入れる。 「ねぇ、ほら。桜の中には俺が入ってるんだよ? 見える?」 「ぇ。んぅ……… んっ。んん…………。」 彼はそう言って僕の足を持ち上げ頭の横に持っていき、見せつけるかのようにゆっくり出し入れする。 僕は彼の大きい欲棒が僕の中を犯していくのを見て軽く達っした。 「うっ…ここ、締まったけど、もしかして見ただけでイッちゃった?」 彼が意地悪そうな顔をして言う。 そして立派なのを僕の顔の前へ持っていき問うてくる。 「ねぇ、これで中、擦ってほしい?」 僕はコクリと頷く。 「ならさ、俺の事、好きって言えよ。」 僕は彼と久しぶりに繋がることが喜びでふわふわとした心地から、一気に奈落の底へ落ちていく気がした。 あぁ。彼は転校生の代わりに僕を抱いているのだ。 だから代わりの僕に好きだと言わせたいのか。 そう思い、口を噤む。 「なぁ、何で言わないの? ………………なぁってば!!!!!!!」 「んあっ!! あっっ、んっ!! んぅ……んんっ」 彼が急に激しく攻めたて始める。 肌と肌の打ち付け合う音が響いた。 「やっぱりあいつが好きなの?俺よりあいつがいいの?あいつのどこがいいの?身体の相性だってこんなにいいじゃん。それに俺だったら絶対こんな風に目が腫れるまで泣かせたりしない。 俺の何が足りないの? なんで俺じゃダメなんだよ!!!!!!!!!」 「ひっ、ま、って…!ふぅ…あぁっ。はげし、んあっ!! んっ、あああっ」 彼が泣きそうな顔をする。 と、同時に律動が速さと力強さを増していく。 僕は耐え難い快感でいっぱいになり、彼が何故泣きそうになっているのか考える余裕はなかった。 「んっ、あっ……んんんっ。あんっ、、あっっっ!! な、なん……で?」 イきそうになった所で突然彼が動きをとめた。 溜まった熱を発することが出来ず、自分から動かそうとするものの腰を持たれているため動くことができない。 「イキたい?イキたいよね。そうだよね。 ならさ、ほら、いいなよ。」 そう言って彼が奥をグリグリと抉る。 快楽は募るものの、達っすることができない僕は懇願する。 「い、う。いうから!!うごいてぇ!!!!!」 「なら言えって。はやく。 望月 桜は日向 葵のことが好きですって。」 「あぅっ、ぼく、は……んっ。あおいさま、の、ひやっ!! こと、が…んぅあっ、すきでっ ああああああああっっっっっ!!!!!!!!!!」 言い終わらないうちに彼は僕を突き立て絶頂へと導き、同時にお腹の中を熱いもので満たしていく。 目の前がチカチカして何も考えられないながらも漠然とした喜びを感じ、無意識にお臍の下あたりを撫でる。 「っっっ!!!! ねぇ、なに可愛いことしてるの? そんなんだともっと俺に襲われちゃうよっ」 「ひゃんっっ!! あっ、あっ、うぅっ……んぅっ、あうっ」 そう言いながら彼は僕をひっくり返し、後ろから彼の硬いままなそれで力強く一突きした。 そしてそれが開始の合図だと言わんばかりに、テンポよく腰を揺らされ、第2ラウンドへ突入する。 先ほどの彼の精子が中でかき混ぜられている音と乾いた音が同じタイミングで部屋に響く。 「あんっ、だめ……イッたばっ、んんっ!! またイッちゃっ、ううっ。イくぅ!! イッちゃうからぁっ!!!」 そんなことはお構い無しに、彼は更なる快感を植え付ける。 「いいよ……。ほら、イきな。」 彼が耳元で低く、でも優しく柔らかな声で囁き僕の耳を犯す。 耳から脳へと電流が走り身体が跳ねて、またしてもピークを迎えた僕は頭が真っ白になった。 それから何度彼を奥へと受け入れ、何度極地に至っただろうか。 僕はもう限界を迎え、壊れる寸前だった。 「いやぁぁぁ!!! あっっ!んあっああっ、あんっ、 もうむりぃ!むりだからぁぁあっっっっ!! こわれちゃうぅぅぅぅ!!!!!!!!!」 「いいよ。俺で壊れちゃいな。 …………桜。 好きだよ。」 「……っっっっっっ!!!!!!」 そこで僕の意識は途切れた。
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