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『晩年様式集』その9 「五十年ぶりの「森のフシギ」の音楽」その2
大江健三郎の最後の長編小説『晩年様式集』の「五十年ぶりの「森のフシギ」の音楽」という章についてさらに記していく。
この章では、実際『群像』2013年2月号に、大江健三郎との対談が掲載されたパトリック・シャモワゾー(カリブ海のフランス領マルティニーク島の小説家)のことについて触れられている。
長江(大江健三郎自身がモデル)は対談の前日までにシャモワゾーの『カリブ海偽典』を読んでいたが、シャモワゾーも対談で、長江のノンフィクション『広島ノート』に感動したと評価している。
広島で被爆した人たちの、「考えの及ばないようなこと」「受け入れがたいこと」としての経験を描いており、それが自分らの祖先が苦しめられていた「奴隷貿易」という、まさに考えられない経験と結んでいる。長江の描き方をつうじて、自分らの本質的な経験と、それをどう表現しうるかを考えることができたと。
そして長江は、文学的にという言葉を使った。この国の新しい作家たちからそういう受けとめ方をされるのは、それが不満だと泣き事をいうのじゃないが、いまやマレだからねと。
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