秋は夕暮れ……

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秋は夕暮れ……

 ききょう(清少納言)が、四季折々の風景を記して、寝たきりの中宮の藤原定子の枕元に置くと、やがて定子は起き上がってその文章を読むほどに回復し、ききょうはひそかに喜びの涙を流した。  秋は夕暮れ。夕日の差して山の端いと近うなりたるに、からすの寝所へ行くとて、三つ四つ、二つ三つなど飛び急ぐさへあはれなり。まいて雁などの連ねたるが、いと小さく見ゆるは、いとをかし。日入りはてて、風の音、虫のねなど、はたいふべきにあらず  秋は、夕暮れ。夕日が照って、山に沈もうとしている頃に、烏が寝どころへ行こうとして、三羽四羽、二羽三羽など、急いで飛んでいくのさえ情緒が感じられる。まして、雁などが列をなして飛んでいるのがとても小さく見えるのは、たいそう趣がある。日がすっかり暮れてしまって、風の音、虫の音などが聞こえるのは、また、言うまでもない。(現代訳)  夕焼けといえば、今も昔もやはり秋だが、電気の明かりがない平安時代は、ビル群の照明も家々の明かりや街灯もなく車のライトもなかった。(あか)く色づいた空と暗い山や畑の対比が、今とは大きく違ったはず。家路を急ぐ鳥たちを眺めつつ、人間も夜の支度を始めたのだろう。そして、陽が暮れてしまえばすっかり暗くなり、秋の夜長は、目に見えるものから、風の葉を揺らす音や虫の声など、耳で聞こえるものを楽しんだであろう。  おそらく現代のわれわれが忘れがちな大自然を、もっともっと身近に感じていたはず。    オレは愛犬シーズーのシーと暮らしはじめて、もっとも大切なものを感じることができるようになったが…… 58b1aa2d-fa30-4150-abde-50b469c944b9
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