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冬はつとめて……
ききょう(清少納言)が、四季折々の風景を記して、寝たきりの中宮の藤原定子の枕元に置くと、やがて定子は起き上がってその文章を読むほどに回復し、ききょうはひそかに喜びの涙を流した。
冬はつとめて。雪の降りたるは、言ふべきにもあらず、霜のいと白きも、また、さらでもいと寒きに、火など急ぎおこして、炭もて渡るも、いとつきづきし。昼になりて、ぬるくゆるびもていけば、火桶の火も、白き灰がちになりてわろし。
冬は、早朝。雪が降り積もっている早朝は、言うまでもない。霜が真っ白におりているのも(いい)。またそうでなくても、ひどく寒いので、火など急いでおこして、炭を持って行くのも、まさに冬の早朝にふさわしい感じがする。昼になって、だんだんにあたたかくなり寒さがゆるんでいくと、火桶の火も、白く灰が多なって、よくない。(現代訳)
雪が積もった朝、愛犬シーズーのシーと散歩に行く。東の空が底辺から色づき、横長の雲が赫く染まっている。
朝陽に照らされた新雪の上を楽しそうに歩くシーの小さな足跡が奇跡のようだ。声をかけると、シーは一瞬ふり向きまた歩き出す。
ショルダーバッグの中のiPhoneから、辻井伸行演奏のラフマニノフのピアノ協奏曲第2番が流れ、オレとシーは壮大な朝の光景の中に溶け込んでいく。
途中、ラーメンチェーン店の簡易な待機用長椅子に腰掛け、ショルダーバッグからオヤツを取り出すと、シーは雪に濡れた前足を遠慮なくオレの膝の上に乗せてくる。オヤツをくちゃくちゃさせるシーの白とゴールドの体毛もまた朝陽に輝く。
──シー、楽しいかい。朝陽に輝く雪もきれいだね!
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