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それに気づけたのは僕の借家の東側の犬走に彼女の家の庭が面していて目隠し用のクチナシの生垣は然程高くなく借家の腰窓から覗くことが可能だからだ。
僕は名前を知っている通り和美ちゃんとは5年前に借家に引っ越して来てから彼女の両親と近所付き合いがてら話す機会があり今ではすっかり仲良くなっていて両親からも留守中、和美を頼みますと信用されている程なのだ。
だから僕はそんな恰好で庭にいては男に襲われかねないよと腰窓から注意してやると、和美ちゃんが笑顔で叫んだ。
「孝志さんも日光浴すればいいじゃない!」
隣のデッキチェアを指さしている。確かに僕が隣に居れば、襲われはしないだろう。しかし、僕とて男、23歳の大の大人だ。間違いがないとも限らない。で、僕は少し躊躇したが、正直な所、和美ちゃんが好きだから結局、ちょっと髪形を整えてからクチナシの花のジャスミンのような芳しい薫りを嗅ぎながらいそいそと芝生を踏みしめ和美ちゃんの所へやって来た。キャミソールにマイクロミニパンツ姿、超刺激的だ。
「やっぱり来ちゃったのね。はい、座って!」
これは完全に誘惑されていると思った僕は、期待感に胸が波立ち、むらむらにやにやしながら無言でデッキチェアに座った。
嗚呼、なんて若々しくてぴちぴちしてるんだ・・・日焼けクリームでてかっててまるで焼きたてのピーチパイみたいにおいしそうだ・・・
「何見てるの?早く横になって!」
「あ、ああ・・・」と僕ははっとして言いつつデッキチェアに寝そべった。
「これで安心だわ。」と彼女は含みのある笑顔で言った。「はい、日焼けクローム」
僕は日焼けクリームを受け取って、「そんなに日焼けしたいのかい?」
「小麦色の肌になりたいの。」
「そうか。黑ギャルに憧れてるのかい?」
「そんなんじゃないわ。からかっちゃいや!」
「冗談はよしてってか?」
「そうよ。孝志さんは小麦色の女性って好き?」
「まあ、嫌いじゃないけど、どっちかって言うと白い方が好きだ。」と僕は庭木の百日紅の白くてすべすべした樹皮を見ながら言った。
「そうなの、残念。」と和美ちゃんは言葉通り残念そうにつぶやいた。
その言葉の響きに僕は百日紅の鮮やかなピンクの花を見ながら艶めいたものを感じて言った。
「和美ちゃんは小麦色も似合いそうだから好いと思うよ。」
「そう。やったー!」と和美ちゃんは一転、然も嬉しそうに歓声を上げた。
僕も嬉しくなると、和美ちゃんは上体を起こして言った。
「私、喉乾いちゃった!孝志さんもジュース飲む?」
「僕はジュースよりアイスコーヒーが飲みたいな。」
「そう、じゃあ、ちょっと待ってて!」と和美ちゃんは言うなりビーチサンダルを履いて立ち上がり、母屋に向かった。
その間、僕は日焼けクリームを塗りながら色彩豊かな庭の中に紛れ込むように置いてある狸のオブジェに何故か見入った。日差しを浴びて殊に陰部が艶々と光っている。自分を見るようで恥ずかしくなった。
そんな折、二つのコップを載せたお盆を持って和美ちゃんが戻って来た。
「はい、どうぞ!」とかわいらしく和美ちゃんに差し出された僕は、アイスコーヒーの方を取り上げた。
氷の音が如何にも涼しげで、それだけでこの区切られた空間が南国のリゾートビーチみたいになり飛び切りのカワイ子ちゃんに持てなされている感じがして何ともトロピカルな快い気分になった。
和美ちゃんはデッキチェアに座るなりオレンジジュースを喉を鳴らしてごくごくと飲んだ。
それに煽られて僕も勢いよく飲んだ。
すると、僕は夢心地の儘、程なく眠ってしまった。
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