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未来とは、鉄道のレールほど固いものである。極めて強い力で押そうと、多少曲がる程度。
「しかし、エンゼルはそもそもこのレールの上に居ない。レールが見えていない。だから皆について行きながら、レールとは違うところを右往左往する。そして、空間的距離が近付くと、時間もその動きに近付く。ここでアイリアはなんと……新たなレールを敷いてしまう。これが答えだった。会長の火の雨を防ぐはずだったアイリアは、こうして防ぐまでもなく全部避けた。そしてこれが判明した……と、いうわけです」
とはいっても、このことを一回聞いただけでは普通は理解できない。何度も咀嚼するように頷いてから、唯一返答したのは校長だった。
「その論理は確定的ではありません。不備もあるにはある。しかし大まかな部分は妥当です。エンゼルさんをあの中に入れれば、何か打開できることは生まれるでしょう。生まれるのは確かなので、あとは活かすのみです」
ニルヴは、どうも表現しがたい感情になっていた。アイリアとエンゼルが交わると、未来は不確かになる。しかし、校長は確かという言葉を使った。妙な話である。
「しょうがないわね、全く。なら私が行くしかないじゃない。まあいいわ。二人共、一回はブチのめしたいし」
エンゼルがこう言って二人の元にさっさと行ってしまったのに、一人だけ引っ掛かりを感じていたのはフォイエルだった。
下手したら、やり過ぎて酷いことにならないか?
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