Drei:Wunder

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「エンゼル!? どうして急に下から……はっ! ひゃうっ!」  エンゼルに気を取られて、今度はリイラが程近い距離に居ることを忘れていた。初めてアイリアはリイラの攻撃を直撃で喰らう。防壁は張れても、流石に少しは通る。 「聞いてる暇あったら眼の前のことに集中! 例えそれが2つになったとしても集中!」 「2つ……あれ? 協力してくれないの?」 「バカぁ!? 元は貴女が急ぐからだし、正直この暴走は手に負えないし! だから私は両方を鎮めに来たの! 分かったら蝶の群れの中で反省しやがれ!」  えぇー、と言いながらエンゼルとリイラの攻撃を華麗に避けていくアイリア。エンゼルにはどうも余裕そうに見える。こういう所で、劣等感を煽ってくる。ムカつく。  暴走するリイラにはもはや牽制程度の攻撃しか行かず、半ば二人の喧嘩と化していく。  傍観者にも、その変化はよく見えていた。そして自分の見た未来と異なる現実があまりにも予想外なかたちを取ることに、緑の少年は頭を抱える。 「何を見せられてるんだ、僕達は?」 「さあな。俺にはもはやリイラが落ち着いてきてるようにすら見えるぜ」  こう言うフォイエルも、流石に分かっている。二人は絶妙な形で、彼女を何とか抑えながら戦っている。決してそっちのけではない。
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