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そんなアイリアと校長には目もくれず、他の者達はリイラの元にやって来る。
「……お、にぃ?」
リイラの目が覚めたようだ。目が覚めて最初の一言がこれというのは、なんとも彼女らしい。
無言で、ゲルパーとフォイエルは思わず抱きついた。リイラは、兄だけを抱き返した。
「なあリイラ。俺のお願いを聞いてくれ。俺だけじゃなくてさ……彼のことも、抱き返してやってくれないか?いつのまにか、俺よりもリイラを大切に思っているらしい」
「……?」
リイラの顔は、何を言っているのか分からない、という顔だった。いや、表情があまり動かないために、周囲にはうまく察せないのだから顔ではないのかもしれない。だが、ゲルパーにはわかる何かがそう感じさせた。
「分からないか?もう俺以外皆敵になる環境じゃないんだ。そう見えていたのかもしれないけど、もう違うんだ。仲間に恵まれてる。そう、彼らは、ちゃんと仲間だから、どうか信じてほしい。ちょっと手荒なやり方をしちゃったけど、許してほしい」
リイラの表情は動かない。しかし、なぜだかその目元には伝うものがある。
「意外とキッカケさえあれば、単純なものね」
「外から見ればそうさ。でも数々の感情のせめぎ合いの結果があの顔だ。何がスイッチになっているどんな感情なのかなんて、僕には皆目見当もつかない。君だって、そうなんだろう?」
令嬢と少年は、ただ抱き合う者達を見ていた。
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