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【Meine Dunkelheit】
リイラはだんだんと他者に心を開くことを覚えていった。言葉も、心なしかスラスラ出てくるようになったと思われる。思えば、兄に対しては最初からそれなりにちゃんと話せていた。
心に付いた傷は何かのキッカケでさらに自分から深くなるものだ。放っておいたとしても。最初から、ある意味彼女は傷付いて生まれた人間だ。そこに更にトラウマが刻まれた、というのは不正確。実は刻んでいたのは自分自身だったのかもしれない。
そこから救われるのには、自力では絶対に足りない。だから彼女を責めるのではなく、支えることが、大事だったのであろう。だからこそ、ある程度は壁を破ることを、フォイエルに許したのだ。そしてその壁は、消えた。
……と、いう流れだ。ハッキリ言って、つまらないな。
「しばらくぶりに夢の中に出てきたと思ったら、急にナニ語ってるの? 気持ち悪い」
もうそう言われるのもあまり心地悪いものではなくなってきた。やはり私はそういう存在でもいいものかもしれないな。いや、あまり敵意を向けられるのも困るが。
「向けるでしょ。今まで姿も見せずにあたしを惑わすばっかり。敵意というか、怪しいって思うよ。勘ぐるくらいはするよ」
それはすまなかった。惑わすのは私の趣味のようなものだが、姿もに関してはどうしようもない。見せる姿、それ自体が無いから。
「趣味?超悪趣味だね」
勝手に言え。
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