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【秘密】
「本当に、よろしいのですか? これは断定ということで」
校長室にて。黒先生は、「Das Geheimnis」と書かれた文書を手にしていた。黒先生の目の前には校長が座っており、その後ろでは女性教師がお茶を淹れていた。
「ええ。彼女こそが。遂に現れました。ですから、担任教師としての務めでもありますし、監視役は貴方になりました。嫌な役でしょうが」
人生ツイてないな──黒先生はそんなことを内心で呟く。もしその役になったら、凶運と言われていたのだが。何なら自分がそう言いだしたのだが、まさか自分が。
「別に、そこまで気負うことはないでしょう。面倒なのは重々承知です。だからこそ、たまたま見付けたサポート役がここに居るんですから。ね、そうでしょう? トイフェル先生」
「はい、本当にちょうどいい役目ですね」
そう言って名前を呼ばれた教師、アリエル・トイフェルは校長の方に振り向く。橙色のショートヘアが軽く揺れる。対照的な色合いの青ブチ眼鏡が、落ち着いた雰囲気を出している。
「お茶、出来ましたけど……熱々の状態で出しても大丈夫ですの?」
「ええ、構いません。冷めるまで飲まないだけですから。あ、シュヴァルツシルト先生はどうでしょうか」
「茶は熱いうちに飲むものと思っているんでね、早いうちにお願いしますよ」
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