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二人の教師の前にティーカップを置き、アリエルは黒先生の隣に座る。やたら近い。黒先生には、露骨に誘惑しにきているようにすら感じた。抜群すぎるプロポーションを活かしすぎだ、と。これが今年で40歳とは、恐れ入る。
「トイフェル先生? やめないか、君は旦那さんも娘さんも居るだろう」
「あらあら。自分が欲しているからってそんな妄想はいけないわぁ。そうですよね、校長先生?」
こんなことをサラッと言えてしまう女が母親でいいのか。娘が──エンゼルがちょっとしたことですぐ怒るのを、何度も目にしているだけに心配になる。
「……明確な返事は返さないでおきましょう。私の方からは、そうですね……悪魔よりも夢魔を名乗ったほうが似合ってるでしょう、とだけ」
この時、黒先生には初めて校長が真面目に見えたように思った。何をするにしても、真面目な話題でも遊び半分の態度でやっている校長が。疲れているのかもしれない、とすら思った。
「それで、トイフェル先生がサポート役になる、という話でしたよね。やはりこれは……」
「お察しの通り。トイフェル先生の娘さんは重要な立場です。彼女に、一番近い立場の人ですから。近づくのは比較的容易い立場であるということを考えると、適任ではないでしょうか」
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