Fier: Später reden

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【魔女の集会】 「最近、どうですか?」 「なんか、この学校における日常ってものにようやく触れられたっていうか……そんな気がしてます」  アイリアの返答に対して、校長は大きくうなずく。うんうん、と声にまで出して。 「なんだかんだ忙しくて悩ましい思いをしてきましたからね、あなたも。どこに行っても優等生として扱われる日々にも慣れてきたでしょう。本当に優秀な人物は、変に優秀さを強調されても動じないものです」  言われてみれば、だんだんと照れくさいような、恥ずかしいような、自身の扱いに対する複雑な感情が薄れているのをアイリアは感じていた。とは言っても、別に誇らしいというわけではない。  無関心。徹底して、アイリアは自分の立場への関心が無くなっていく。自然に自分に定着していく。 「楽な気分では、あるんです。でも……こんな、ある意味では虚しいというか、自分に疑念が湧いてくるというか、そういうことってあるんだなぁ、って思うんです」 「……私達は、あなたが、私が思っているよりずっと、どうやら似た者同士らしいですね。誰も寄せ付けられないのは、だんだんと虚無感が生じます。けれど、私とあなたは違う。友達が、近くに居るではありませんか」  校長はアイリアの右肩に手を置く。ここでなんとなく、アイリアには分かった。  会話のロケーションが、いつもの校長室ではなく、廊下である理由が。
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