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「はい。まあさっくりと言ってしまった方がいいでしょう。あれは嘘です」
アイリアはその発言を理解するのに少しばかり時間を要した。当然である。校長の発言はすなわち、教職にある者が嘘の知識を授けたということである。校長は教職とは違うかもしれないが、少なくともアイリアに対しては教え手として接しているはずなのだ。
「校長先生? それは許容されることではないのでは?」
「そうでしょうね。しかし黙認されます。なぜか?それは真実が都合の悪いものだからです。数多の教師がそういった理由で嘘をつき続けます。理解を面倒にするという意味で都合が悪いこともあれば、理解されると困るという例もあります。あの段階では実はそうだったのですよ」
呆然。アイリアの内にある感情は、それに支配される。
ただ、右上に見える校長の顔を見上げて、首を震わせるのみ。
「知っています。私はほぼ全て知っているんです。伝えられる範囲は限られていますがね。すなわち、発表予定のある限りにおいて話せますが、ほぼ話せません。今はあなたの知識に付け加えられる点はほとんどありません。要するに伝えたかったことは、知識が真実であると断言するのは難しいということなのです。こうして意図的につかれた嘘により、困惑させられるハメになりますから」
校長の顔は、困惑するアイリアを見て楽しんでいるようであった。
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