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「なんか話すこと、無くなっちゃいましたね。どうします?」
「無くなっちゃあいないでしょう。あたしは粘りますからね。言えないことを言わせるために」
校長は一つため息をつく。少し呆れ気味に。
「あのですね。言い換えればどうなるか、考えてみてほしいのですよ。そのうち分かるってことです。今すぐ知ることに意義などないことは、分かっていることでしょう」
「でも……!」
言いかけて、やめた。校長の言う通り。今すぐ知ったところで何だというのか。知って納得できることかも、定かではない。
「お分かりですね。そういうわけですから、もう話すことが無いんです。あ、でも日常のお話については付き合いますよ。私、結構ヒマなんで。趣味の話とかしませんか?」
「いいです。またの機会には考えておきます」
釣れませんね、と校長はただ息を漏らすのみだった。
元々釣るつもりがあったのかどうか、というのは少しばかり疑問ではある点だが。結局、何が本当なのか、この人物はよく分からない。
「それじゃあ、またの機会ということで。今日はこれくらいにしておきましょう。では」
「はい」
相変わらず、どこかぎこちない様子で別れていった。
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