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「危機?」
千代は「はい」と吐くように呟くと懐から書状を取り出した。
「私の祖父が『時川』様宛に書いた書状です」
霜月は千代から書状を受け取るとすぐさま折りたたまれた書を開く。
「やけど、なんでわざわざこんな所まで?確か伊勢には『神宮』があるやろ?」
煉は不思議そうに問いかけた。
彼の言う通り、千代の村のある伊勢の國には千年以上前から『時川神社』よりも遥かに大きい『神宮』が存在する。
古くから祈祷や厄祓いなどで訪れる者が多い神社だ。
「祖父が言うには『神宮』では駄目なのだと……」
「『神宮』やとあかん……?」
「確かにこの要件、『神宮』では無理やな」
霜月は視線を書状から千代へと戻した。
「どうゆうこと?」
「煉、お前も読んでみ」
霜月は煉に書状を渡す。
煉は書状を受け取ると食い入るように読み込んだ。
「……!鱗の化け物…シモ、まさか」
煉の言葉に霜月は静かに頷くと、再び口を開いた。
「一つ確認したい。あんたのお祖父様はなんでこの事を?」
千代は語りだす。
「実は村を出る数日前、山菜へ出た村人の何名かが山で化け物を見たとの知らせがあったのです。長である祖父は父と村人の何人かを連れ山の様子を見に行くことになりました。そして山の深く、太陽の光が僅かに射し込むその場所に化け物が居た、と」
「鱗の化け物がか?」
煉の問いかけに千代は「ええ」と頷いた。
「そして化け物は祖父達を襲いました。父と村人の何名かは喰われ襲わで帰らぬ人となり、祖父と残り数名はなんとか逃げ延びたそうです」
「それで、化け物はどうなったん?」
「そこまでは……ただ、山から降りて来ていないのは確かだと言っていました。周辺の村も化け物を見ていないと……」
「それはあんたも見たんか?」
「え?」
霜月は千代に問いかけた。
「い、いえ。私は祖父から話を聞いただけです」
「そうか」
そう言うと霜月は立ち上がる。
「煉、支度しろ」
「よっしゃ。あいつらにも伝えてくるな」
煉も立ち上がりそそくさと部屋を出て行く。
「引き受けてくださるのですか?」
千代は驚いていた。
こんな危険な話を受けてくれないだろうと思っていたからだ。
「そいつは俺らにしか受けられん、というか俺達の役目やからな」
霜月も部屋を出ていった。
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