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とまあ、男二人、羽柴秀吉の小姓である佐吉と記之介はこの地域周辺に伝わる『鱗の化け物』について、『時川神社』の主人に話を伺いにやって来たのである。
「にしても……暑いなー」
記之介は手のひらで顔をパタパタと扇ぐ。
「まあ、夏だからな」
佐吉は持っていた手拭いで汗を拭う。
「夏って言っても近江とまた違う暑さだぞ」
「水が無いんだ。我慢しろ」
「水の都なのにか?」
「それは京の都の話だ。ここは山城だ」
「周りが山だけに?」
記之介の「痛ぇ!」と悲痛な叫び声が盆地を響かせる。
「ぐずぐずするな。ほら、川が見えてきたぞ」
「ひでえよ兄貴!置いてくなって!」
記之介は足の脛を押さえながら、すたすたと歩く佐吉の後を追った。
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