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2人から「森蘭丸」と指差された少年は舌打ちをすると不機嫌にそっぽ向く。
「ほら、やっぱランちゃんの知り合いやん」
少女の言葉に「俺は知らん」と少年は言う。
「嘘付け!上様とこの小姓だろ?この前、うちの殿と会ったよな?オレもそこに居たぞ」
記之介はぐいぐいと少年に突っかかる。
その状況に少年は呆れたのか、渋々認めることにした。
「……わかった。確かにお前達の言う通りだ」
「全く、シラを切るなよぉ!」
相当怒っていたのか、記之介は歯をギリギリと音を発てて食い縛る。
「ランちゃんは恥ずかしがり屋さんやな」
少女のからかいに「お前は黙ってろ」と蘭丸はため息をつく。
しばらく黙っていた佐吉は問いかける。
「上様の小姓であるお前が何故ここに?」
佐吉達の主人の主人の小姓、森蘭丸が本来居るのは彼の主人の元である安土だと思っていた。
だが、蘭丸本人は京の都からだいぶ離れたこの地にいる。
「それはこちらの台詞だ。お前達こそ、何故?」
「何故ってそりゃあ……」
と記之介が話しかけると佐吉は咄嗟に「おい」と肘で記之介の腕をつつく。
「あ……」
(これ、内密だったな……)
頭に血が上っていた記之介はこの地へ来た経緯をすっかり忘れていた。
佐吉は聞いた身ではあるが、現に蘭丸に知られては不味いので距離を置きたかった。
そして、記之介の首の布を掴み、
「すまない。俺達は先を急ぐので失礼する」
と言って歩もうとした。
その時だ。
「うちの神社に用があるんやろ?」
その言葉に佐吉と記之介は「え?」と歩むことを止めた。
森蘭丸のことを「ランちゃん」と呼んでいた少女だった。
「あ、挨拶が遅れて申し訳ありません。私は時川水無月言います」
「ときかわ……?」
「君はまさか……!」
「お侍さん達が探してはる『時川神社』の者です」
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