序章

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 走る。  女は走る。  敵はざっと数えて五人程。  (あと少しなのに……!)  女はある目的があってこの地に赴いたのだが、今や追われの身となっていた。  (この先にある池……そこへ行けば……!)  森を抜けたその先は太陽の光が照らされた一面に広がる田畑と野原。  その先に見えるのは  (み、湖!?)  大きな大きな巨大な水溜まりが現れた。  (ここは京より南のはず……!) 「うわぁっ!」  足が絡まり、女は倒れた。 「もう逃がさんぞ」 「おとなしく荷物を置いてけ!」  女を追って来た盗賊の男たちは刀や槍を構える。  女は風呂敷に包んだ荷物を抱き締める。 「絶対……渡せません……!」  男たちは一斉に女に斬りかかる。  (助けて──!)  突然、ビューっと強い風が吹き荒れ、男たちは全員後ろへひっくり返った。 「っ、なんだ……!?」 「……──!」  女の前に一人の男が立っていた。  長い金髪を小さく束ね美しい面立ちの青年だった。 「随分派手にやったなぁ」  後方から別の男がやって来た。 「血は飛んでへんやろ。つか遅いで煉」 「お前が速すぎんねん!」  突然現れた男たちに女はぽかんとする。 「何しやがる!?」  連中の1人が体を起こして彼らに怒鳴り付ける。 「何って、元々はお前らやろ。女1人に大の大人の男が群がりやがって」 「なんだと……!?」  他の男達も立ち上がり、それぞれ武器を構える。 「女は後だ!先にガキ共を叩きのめすぞ!」  盗賊の長の言葉に男達は一斉に2人に襲いかかる。  だが、 「──!」  2人の力は凄まじく、男達の手から武器が飛ばされたり、刃が折れたりもした。 「誰がガキやて?」 「ここで争うことは許さん。他所者はとっとと帰れ」  盗賊は「畜生」と言い捨て散り散りに去っていった。 「なんや、腰抜けかいな」  2人の青年は刀を鞘に納める。  救われた女は立ち上がり、2人に礼を言う。 「助かりました。ありがとうございます」 「ええって。ほんま賊には気いつけなあかん、て……」  女を見た2人は目を見開く。  金髪の青年はその名を口にした。 「みなづき……?」
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