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「私は伊勢の國から参りました、千代と申します」
女は千代と名乗った。
伊勢から遥々、京より南にある『時川神社』へ訪ねたいとのことだった。
幸いにも2人の若い青年は千代が目指していた『時川神社』の主と奉公人であったのだ。
先程のこともあり、結界の張られた境内にある屋敷へ2人は千代を招き入れた。
「ほんま、そっくりやな」
神社の奉公人である黒髪の青年、川原煉は千代をじっと見る。
「そ、その、水無月さんに……ですか?」
「そうそう。な、シモ」
「似とる人間なんてよおさん居るやろ」
神社の当主である金髪の青年、時川霜月は千代の前と煉の前に茶の入った湯呑みを置く。
「はぁ?自分が一番驚いとったやろ?」
霜月の言葉に煉は歯向かう。
千代は2人の会話の傍ら、疑問に思った。
普通、客人に茶を用意するのは奉公人である煉のはずだ。
なのに何故か主の霜月が淹れている。
「お前はいい加減、茶の1つくらい淹れられるようになったらどうや」
「話を反らすなや!しゃーないやろ、俺の淹れた茶なんざ誰にも飲ませられんのやから」
そういうことか、と千代は1口茶を飲んだ。
聞くのに気が退けてしまっていたので言ってくれてほっとした自分がいる。
主の霜月は煉の隣、千代と正面の位置に座った。
「単刀直入に聞くが、何故伊勢からこんな所まで?」
「それは……」
千代は出された湯飲みを置くときちんと座り直す。
「実は……私の住む村が危機なのです」
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