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「私のことが好きなら、どうして私のことが好きなのか教えてよ」
諦めの悪い私に彼女はそう告げた。私は何も言えなかった。理由なんて出てこなかったのだ。ただ、「私は彼女が好きだ」という事実だけがそこにあり、中身はなかった。私は後悔した。その訳を、理由を蔑ろにしていた自分が、今まさにその理由に殺められた。
しかし、現在もどうして彼女が好きだったのか、その理由は分からない。
例えば、私と仲の良い友人Aとどうして仲良くなったのか、明確には思い出せないし、私が親子丼とカレーが好きなのにだって理由なんてない。美味しいからというのは理由にならない。美味しい食べ物なんて他にもたくさんある。人を好きになることなんて、それとたいして変わらないのではないか。理由なんてなく人は恋をするのではないか。
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