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君について
さて、長かった自分語りももうそろそろ終わる。と言うのも、実は私は結婚したのだ。
大学を卒業して地元に帰った私は知人の紹介である女性と知り合った。髪が長くて少し背が高くて、ロングスカートの似合う美しい人だ。私は最初こそ何の感情も抱かなかったのだが、次第に彼女に惚れていった。
一緒に映画を見に行ったときのことだ。たまたま見たい映画の席が取れず、しかし映画館まで来てしまったものだから仕方なく子ども向けのアニメ映画を見ることにした。これまたたまたま一番後ろの良い席が空いていたものだった。
私は若干不満気味だった。この歳でこんな映画を女性と見るなんて、となりに座る君が母親のように思えた。そして不安でもあった。君にとってもやはり不満なのかと思って。君は普段大人しいから何も言わず、その表情からは何も感じ取れなかったけど。
上映終盤。私はずっと不満と不安でまったく映画に集中できずにいて、ずっとそわそわしていた。内容なんてまったく入ってこなかった。そのとき、となりからすすり泣く声が聞こえてきた。
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