君について

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 君は目に涙を浮かべながらスクリーンに夢中になっていた。私は驚いた。君はこんな映画で感動できる、感受性豊かな人間なのだと。君の意外な一面を見れた私は黙って君にハンカチを渡した。  映画が終わって私達は近くのカフェで食事をとった。君はまた泣きながら映画を振り返りつつ、そのアニメの魅力を延々と語った。普段は大人しいのに、好きなもののことになると君は熱くなった。そのギャップに思わず私はやられてしまった。今では君以外の女性のことなんて野に転がるじゃがいもにしか見えないくらいだ。  私達の仲はいたって良好だった。同棲もプロポーズももはや若干業務的だったが、確かに愛はそこにあった。  かくして私達は結婚することになった。2人ともまだ若く、貯蓄も多くはないので大きな式は開けない。小さな式場を借りて互いの友人数人と家族だけで式を行うことになった。
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