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パワースポット
なんでもこの十角神社は神聖気場で、ご神木の周囲は恋愛成就の気運が高いらしい。今も大勢の男女が木の周りに集まっている。
だが土曜の朝から混雑しているのは神社巡りブームが理由じゃない。今日は神社主催の夏祭り。町内会の屋台に住民が集まっているのだ。なので、社の影に隠れているのがバレないようオレは細心の注意を払っている。毛並みが美しい白色ロングコート・チワワは目立つからな。
「渡里君、イカが焼けたよぉ~」
BBQコンロをうちわで仰ぎながら、カヤが嬉しそうに微笑んだ。人手が足りず手伝って欲しいとヤツに頼まれたそうで、朝から町内会活動に参加中。クソ~っ、汗だくな姿がすげぇそそる! と思っているのはヤツも同じだろう。
神社巡りの女どもの間で、"イケメン神主見習い"と人気急上昇中らしいラム助も、カヤの火照った姿にエロ心を刺激されているようだ。爽やかな笑顔とは逆に、眼が怪しく光っている。
「先輩はイカを焼くの上手ですね」
「そう~?」
エヘっと笑ったカヤの額の汗を、ヤツがタオルで拭ってやっている。ラム助めッ、さりげなくカヤに触れやがってッ。それ以上何かしやがったら去勢してやる!
「先輩、僕がタレを塗っていくのでイカをパックに入れてくれますか?」
「うん! じゃあ渡里君、テング取って~」
「え?」
「あ、リング………キング?」
「はい、トングどうぞ」
「ありがとう!」
笑顔で道具を渡したラム助と、微笑むカヤ。2人の姿はまるで恋人同士のようだ。あいつッ、後輩の分際でイチャつきやがってぇッ……殺す!
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