けもの

4/7
前へ
/7ページ
次へ
 天井からぶら下がる電球の下、それらは全て同じ色に見える。熟れた柿色。  あまりに美味そうなので、一本を口に咥えた。鋭く舌に突き刺さる、容赦ない一撃を受ける。太くて、硬くて。一見しっかりしている、あの女らしい髪だった。  一所に集め終える。ふぁさふぁさとした遺物は、なせだか収集癖を刺激した。さて、これらを保管するにはどうすれば良いだろうか。  それから三日、やはり何食わぬ顔のまま過ごす。導き出した答えは、布人形だった。丸坊主の人形の頭に、あの女の毛を生やすのだ。  手芸店では、良い材料や器具が見つかった。それでも、一本一本を並べて植えていく作業は、どこまでも緻密で神経を使う。一方で、ひたすら打ち込み続けていけば、どこか心が安らいでいくのだ。  完成したのは、初夏の頃だった。不器用なばかりに、女というよりかは、毬栗坊主という形である。それでも、あの女の寝間着で作った洋服を着せると、どことなく体裁が整って見える。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加