オムライスとミルクティー

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オムライスとミルクティー

 店長さんに連れられてミルクティーを飲んだあの日から、わたしの調子はすこぶる良い。こっそり店長さんをモデルにした漫画を描いてみているのだが、それが担当さんに褒められた。キャラクターにリアリティがあって良いですねって。実在する人をモデルにしてるんだから、そりゃそうよ。  店長さんと若い店員さんの恋物語。だけど、このお話を描き進めていくと、わたしの胸はなぜだかチクチクと痛む。でも、描かなければ。  だから、最近は長時間カフェに居座っている。お昼のちょっと前に入店して、まずはブラックコーヒーを飲む。それから、お腹が空いたらいつものランチメニューを頼んで、食後に甘いミルクティーを飲む。これまでずっと座っていた窓際の席はやめた。店内を広く見渡せるような端っこの席を陣取って、遠くから厨房の様子を眺めている。  わたしはこれまで、店長さんはずっと厨房に籠りきりなのだと思っていたのだけど、実はちょこちょこ顔を出していることを知った。あの優しい表情で、お客さんたちが食事する様子を静かに見守っている。でも、わたしと目が合うと、店長さんはあの大きな手で目を覆いながら厨房にまた戻っていく。そんなときはすごく悲しくなってしまって、大好きな甘いミルクティーを飲んでもなんだか味がしない。
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