わたしと店長さん

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 あのお店のオムライスが大好き。ふわふわの卵のあの黄色は幸福の色だ。中のケチャップライスは、昔お母さんが作ってくれた味を思い出す。どんな人が作ってくれているのだろうと気になるけど、厨房に立つ後ろ姿しかわたしは知らない。  それからミルクティー。茶葉を丁寧に煮出しているのだろう。紅茶の味がしっかりしていて大好き。それを台無しにしてしまうかもしれないけれど、わたしは角砂糖を三個入れて飲むのが大好き。脳が溶けてしまうくらい甘いのがたまらない。最初は小皿に一つだけだった角砂糖は、気を利かしてくれているのか、いつの間にか三個になった。たぶん、あの若い店員さんが覚えてくれているのだろうな。  最近よく話しかけてくれるその店員さんは、厨房の奥の店長さんとも仲が良いみたいで、店内に客が少ないときは楽しそうな話し声が聞こえてきていた。気になっているのは、あの子以外の店員さんを見たことがないということ。もしかしたら、ふたりは恋仲なのかもしれない。  今度、お店に行ったらあの子に馴れ初めを聞いてみようか。漫画のネタになるかもしれないし。  お店のことを考えていたら、どうしてもあのミルクティーが飲みたくなった。でも、今日はもうランチタイムも終わってしまった。それでも、どうしてもミルクティーが飲みたい。カチカチの頭をミルクティーで甘やかして、そしたら、頑張れるかも。  簡単に身支度を整えて、外に出てみる。昨日まで暑かったのに、今日は少し肌寒くて、もう少し厚手のカーディガンを羽織ってくるべきだったと後悔した。
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