【ピンポンがなってる】

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【ピンポンがなってる】

わたしが、 そちらに動き出してから、 どこかのテーブルの ピンポンチャイムが 聞こえてた。 多分、 この状況ならば、 しゅーくんが、そちらへ 行くだろ。 ほんとに、間が悪い。 盛大なため息、つきたい。 渋々、その集団に近づく。 「はい。」 彼らの前に立った。 テーブル4人がけに座る4人。 騒がしいのは手前のふたり。 奥ふたりは、 なんか、ニヤニヤして すごくやだ。 テーブルの上もぐちゃぐちゃ、 マナー悪い。 「あのね。かなりん、 彼氏いるの?」 は? 「ワンチャン、 アドレス交換しよ?」 え? 「なんなら、つきあう?」 や。 「俺、意外とモテるよ!」 ・・・ えっと・・。 「すみません。 いま、バイト中です。 他のお客様も いらっしゃいますので、」 「あ、照れなくてもいいよ?」 「いえ、あの、御用の際は、 そちらの呼び鈴を」 「うん!だから、 アドレス交換!」 スマホをごそごそ出してくる。 「あのいま、バイトで、 手元にスマホは 、」 「あ、じゃ、何時、おわり?」 「だから。」 え。 あ。 ど。 どしたらいいの?! こんな、とき、 どうしたらいいの?! 足元が、 一瞬、 ぐにゃりと歪んだ気がした。 「お客様、申し訳ありません。 何か、こちらに不手際が ございましたか?」 でも、 窮地にハマったと思った瞬間、 ガタイのでかい、 パパ年代の店長が、 やってきてくれた(涙) 心の中は、(涙)(涙)(涙) ヤバかった。 怖かった。 ガチで、 ヤバいって泣きそうだった。 助かった。 店長を見ると、 ゆっくりうなづいてくれた。 「あ。いや。」 男子集団がちょっとひいた。 周りのお客様の視線が ここを注目していた。 「あのお兄ちゃん、 怒られてる?」 「しーっ!!」 隣の小さい子の声が響いた。 「あ。いや、おあいそ、」 その子の声に 男子がさらに、ひく。 そして、 どこかでピンポンがなった。 「あちらの対応をお願いね。」 その音に反応した店長に促され、そそくさと、 その場を離れる。 足が震える。 泣きそうだった。 ほんとは、 めちゃくちゃ怖かった。 どうしよ、 泣きそう。 泣き出しそう。 もう、大丈夫なのに、 足がガタガタ震える。 ホール上にあるコールナンバーを 確認したら、 ピンポンが鳴ったのを、 海人さんの席だった。
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