春を待つ日々

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春紀が東京から懐かしむ 紀州・かつらぎでは 相変わらず恙無い暮らしが 穏やかに営まれていた。 かず子は夏に産んだ次男・亮平を 抱きながら、長男・亮真と 家のぐるりをぶらぶらと…。 3b275cd7-820b-4a51-b210-e4961d9bc4d5 ひょいとみると、川辺には 遅くまで咲く彼岸花、 例年通り…先祖供養も兼ねて 先月には亮一(春紀)の供養を今年も、 家族揃って執り行った。 (時間は流れる……) あぶあぶと自分を見つめる亮平の 頬を指で撫でる後ろから 「お友達とお寺で遊ぶ」 そう言ってたま子が走っていった。 「暗くなる前に帰るのよ」 たま子の手には、飴玉の袋…。 たま子の中にある“止まった時計”が かず子には切なかった。
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