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陽がまだ落ちきらぬ時間だが
春紀は馴染みとなった天満屋へ
即隆を連れて、
「まずは…」
「元気でよかった、よかった」
二人で酒坏を開けた。
「二年になるか…二年…」
「家は…親父や母親…
たま子は元気でしょうか?」
「ああ、元気にしている」
即隆は数枚の写真を渡した。
十歳になるたま子と、両親が
写る写真では、月日の分だけ
たま子は大きくなって
その分、両親は小さく見えた。
そして、決してかず子や亮二、
その子供達が、撮られた写真は
一枚もないところに、
未だ二人の名をあげることも
出来ない春紀への、即隆の気遣いが
垣間見える。
心はすでに志保にあるというのに
なかなか消えぬ“わだかまり”を
春紀は再認識した。
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