春を待つ日々

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酒の進むまま… 「エエ(良い)魚、入りましたさかい  煮付けに致しました」 気の利いた女将の料理のままに 世間話と志保の話に 楽しい時間が過ぎてゆき…、 「お寺の支部会の集まりでしたね、  このお近くに宿ですか?」 「ああ、歩いてすぐや」 別れのときが来た。 「これ…志保から和尚に東京土産と」 二つほど泉岳寺界隈の菓子の箱と 風呂敷包みを、春紀は差し出した。 「反物か?」 「この間、足利というところで  エエ銘仙がありました。  たま子に…なんとか…  巧い言い訳つけて、  『和尚が手に入れたもの』として  渡してもらえんでしょうか」 出張の際、志保のものと一緒に、 どうしても…春紀は たま子にも…買わずになど おれなかったのだ。
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