春を待つ日々

13/33
前へ
/315ページ
次へ
即隆を宿へ送った春紀が 天満屋に戻ると、二人程の常連客と あと数人は芝山の会社の人間だった。 (そう言えば…) いつも奥の机で独り、静かに呑む男性。 “男”と言うには失敬にあたる様子の 上物の着物が板についた男で 一言二言女将と言葉を交わす以外は 肴一つに手酌が似合う。 (どういうひとなんだろう) 春紀がそんな事を思いながら 正のいる席へつこうとすると 「遊びならエエ加減にしぃや!」 厳しい女の声がした。 声の主は、この店の娘の一人・みどり。 「茜は本気なんや!  浮気相手の数の内なら  ヤメたってや!!」 言われている正は ぬるいビールのグラスを持ったまま。
/315ページ

最初のコメントを投稿しよう!

112人が本棚に入れています
本棚に追加