春を待つ日々

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「夕方なのに、女子寮が  賑やかだね、仕事が  順調なんだ…」 女子寮からの憂いない笑い声が 小鳥の囀りのようだった。 蓉子の狙い通り、女子会社員の 制服の注文はうなぎのぼりに加え、 女子専門校からの制服注文も   来るようになった婦人服の仕事は 寮の隣に仮設工場を作り 通いのお針子まで雇うまでに。 その中には 「じゃあ、志保さん、  また明日、さようなら」 と、寛子と同じ“被り物”を した娘の姿もあった。 「彼女は?」 「寛子ちゃんと樹を助けてくれた  あの警察官のお嬢さんです」 「そう…何が縁になるやら」 「ええ、それに…  あのスカーフ(被り物)、  注文が有るのですよ」
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